物流・運送業界の「2024年問題」とは?

 働き方改革により時間外労働時間の上限が設定されることで、法令を守り効率的な業務を行うように 物流・運送業界では、「2024年問題」が浮上しています。

 物流・運送業界の「2024年問題」とは、働き方改革法案によりドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる問題の総称のことです。
(具体的には、ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念されています。さらに、物流・運送業界の売上減少、トラックドライバーの収入の減少なども考えられると言われています。)
 日夜、モノの移動で生活を支える物流・運送業界は業務の特性上、長時間労働が常態化しやすい業種でした。長時間労働の背景には、ドライバーの若手不足や高齢化、またEC(電子商取引)の成長による需要の増加などが挙げられます。このような実態を改善すべく、働き方改革関連法に基づき、時間外労働時間の制限が定められました。

これを踏まえて実際に、ドライバーの1か月の拘束時間を以下の条件にあてはめてみます。

 上の図のように、トラックドライバーのうち約3割は、1か月の拘束時間が275時間以上であることがわかります。つまり、法定に順って274時間以内を目安にした場合、超過してしまうため、これまでの働き方では物流の3割以上が輸送できない可能性があるとも言われています。

2024年問題で生じる物流・運送業界の諸問題
 2024年問題において、ドライバーは拘束時間を「274時間以内」に収める必要があります。このように、ドライバーの全体の労働時間が削減されることで懸念されます。
1つ目の問題は、「物流の停滞」です。
2つ目の問題は、「物流・運送業界の売上と利益の減少」です。
3つ目の問題は、「ドライバーの収入減少」です。
ドライバーの労働時間が短くなると1日の運搬量が減少し、当然、売上や利益にも影響します。加えて、2023年4月からは、中小企業においても「月60時間の残業代の割増賃金引上げ」が適用されます。割増賃金が引き上げられることで、人件費が増えてしまうケースも予想されます。
物流・運送業界で勤務するドライバーは、時間外手当を受け取っているケースも少なくありません。時間外労働に上限が設定されることで、従来受け取れた時間外手当も減少します。それに伴い、収入そのものも減少してしまうドライバーが発生する可能性も考えられます。

デジタルツールの導入など業務効率を上げる対策が必要
 労働時間の全体的な削減により生じる2024年問題に対応するには、業務の見直しや効率化についても考える必要があります。
 例えば、労務管理におけるドライバーの勤怠管理。各ドライバーの勤怠状況を正確に把握し、時間外労働をはじめ労働時間の調整を行う必要。実務面でも、ドライバーの拘束時間や負担をかける「荷待ちや荷役」の時間の削減が挙げられます。荷物の積み下ろしを予約制にする、機械の導入や現場スタッフの協力を仰ぐといった対策が必要。ほかにも、運行計画の見直しもドライバーの稼働時間削減につながる方法の一つです。コスト面を考慮し、臨機応変に高速道路を利用するなど、なるべく空車時間を短縮することが挙げられます。より正確かつ効率的に業務を改善する方法としては、デジタルツールの導入も方法の一つです。

 2024年問題は、物流・運送業に大きな影響を与えることが予想されます。一方業界としては、限られた時間で最大限の業務効率を達成することが課題です。そのためには、精緻な労働時間管理や、適切な運行計画を行うことも求められます。業務の見直しの第一歩としても、デジタルツールの活用は有効な方法と言えるでしょう。